2020年4月11日 土曜日
民法(債権関係)改正(7)離婚と債務不履行、契約解除
※新型コロナウィルス感染症の状況は極めて深刻ですが、たんたんとブログを書きます。
************
離婚は経済共同体の解消を意味するため、夫婦共同経営の場合など、債務不履行や解除も、場合によっては問題となります。
①債務不履行による損害賠償請求の帰責事由
【問題の所在】
・現行法では、債務不履行による損害賠償について、債務者の帰責事由が要件となることを履行不能(現415条後段)の場合にのみ規定しているが、履行不能以外の債務不履行にも共通のルールとして解されているため、条文と解釈に齟齬が生じている。
・帰責事由について、条文上明確ではない。
【改正の内容】
債務不履行一般について、債務者の帰責事由が要件となること、帰責事由は、契約及び社会通念に照らして判断される旨を規定する(新415条1項ただし書)。
②契約解除の帰責事由
【問題の所在】
現行法では、履行不能による解除の場合、債務者に帰責事由がない場合には、解除が認められない(現543条)。また、同条に基づく解除だけでなく、債務不履行解除一般について帰責事由が必要であると解されている。しかし、債務者に帰責事由がない場合であっても、解除が認められないとすると、当事者にとって不当な事例が生じる。
【改正の内容】
・債務不履行による解除一般について、債務者の帰責事由がない場合であっても解除を可能なものとする(新541条、542条)。
・不履行が債権者の帰責事由によるものである場合には、債権者は解除できないとする(新543条)。
③その他の契約解除の要件
【問題の所在】
・現行法の文言(現541条)によれば、あらゆる債務不履行について催告解除が認められるように読めるが、判例では、付随的な債務の不履行や不履行の程度が大きくない場合には、催告しても解除は認められないとしている。
・現行法上、定期行為の履行遅滞(現542条)、履行不能(現543条)の場合に、無催告解除が認められているが、この他に、実務上、履行拒絶の意思が明確な場合、契約の目的を達成するのに十分な履行が見込めない場合にも無催告解除が認められている。
【改正の内容】
・催告解除に関して、契約及び社会通念に照らして不履行が軽微であるときは解除することができないことを明文化する(新541条ただし書)。
・無催告解除に関して、履行拒絶の意思の明示、契約をした目的を達成するのに足りる履行の見込みがないこと等の事情があれば解除が可能であることを明文化する(新542条)。