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竹村総合法律事務所

代表弁護士のブログ

2020年2月24日 月曜日

民法(債権関係)改正(5)約款

約款とは
大量の同種取引を迅速かつ効率的に行うために作成された定型的な内容の取引条項
をいいます。インターネット取引や、インフラ、多数の会員サービス等で多く用いられています。
【問題の所在】
・民法の原則によれば、契約の当事者は、契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないが、約款を用いた取引をする多くの顧客は約款に記載された個別の条項を認識していないのが通常である。
・民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要だが、約款を用いた取引では個別の承諾を得られないこともある。
【主な改正の内容】
 定型約款に関する規定を以下のとおり新設
①「定型約款」の定義(新548条の2第1項)
ⅰ 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、
ⅱ 契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体
(具体例:鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など)
②定型約款が契約内容となる要件
・次の場合には、定型約款の個別の条項についても合意したとみなすことを明確化(新548条の2第1項)
ⅰ 定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき
  又は
ⅱ 定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき
・相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意しなかったものとみなすことを明確化(新548条の2第2項)
③定型約款の変更要件
 次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化(新548条の4第1項)
ⅰ 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
  又は
ⅱ 定型約款の変更が、契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
※定型約款に関しては、反対の意思表示した場合を除き、施行日前の既存の契約についても改正民法が適用されるため、上記要件により契約内容が変更される

以上

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2020年2月19日 水曜日

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡について
【問題の所在】
債権譲渡による資金調達(特に中小企業における資金調達方法)の活用が期待されているが、
将来発生する債権の譲渡が可能であることが条文上明確でないことや、
譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則として無効であることが円滑な資金調達を行う際の障害になってしまっている。
離婚においては、当面の生活費の工面や、家族経営の場合の資金繰り、相続税の支払いなどに検討を要すべき事例がある。
そこで、
【主な改正の内容】
①将来債権(文字通り、将来発生する予定の債権のこと。)について
将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設(新466条の6)
②債権譲渡禁止特約について
・譲渡制限特約が付されていても、原則として債権譲渡の効力は妨げられない(新466条2項)=債権譲渡は有効であり、譲受人が債権者となる。
例外として、預貯金債権についての債権譲渡の場合、悪意又は重過失の譲受人その他の第三者との関係では、債権譲渡は無効となる(新466条の5)。
※譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するように請求することができる(新466条の3)。

以上

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2020年2月3日 月曜日

民法(債権関係)改正(3)保証人・保証契約

※離婚においても、配偶者が保証人になっている場合や事業で保証している場合が多々あり、民法改正は重要な影響をもたらす。

①包括根保証の禁止の対象拡大→想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある

【問題の所在】
 平成16年民法改正により、貸金等債務に関する包括根保証の禁止が規定されたが、貸金等債務以外の根保証についても、想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある。
【主な改正の内容】
・極度額の定めの義務付けについては、すべての個人根保証契約に適用(新465条の2)
・保証期間の制限については、現状維持(貸金等債務に限定)(新465条の3)
・特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の元本の確定については、すべての個人根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産等があっても貸金等債務以外の根保証では元本確定事由とならない点は、現状維持(新465条の4)。

②事業用融資における第三者保証の制限
【問題の所在】
 個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められる事例があり、第三者個人保証を抑制する必要がある。
【主な改正の内容】
 事業用融資の第三者個人保証に関して、保証契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人が保証意思を表示していなければ効力を生じないとの規定を新設(新465条の6~新465条の9)。

③保証契約締結時の情報提供義務
【問題の所在】
 保証人が主債務者の財産状況等を十分に把握せずに保証契約を締結している事例がある。
【主な改正の内容】
 事業上の債務の個人保証に関して主債務者による保証人への情報提供義務の規定を新設(新465条の10)。情報提供義務違反の場合、保証人が主債務者の財産状況等について誤認し、
主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、又は知ることができたという要件を満たせば、保証人は保証契約を取り消すことができる。

④主債務者の履行に関する情報提供義務
【問題の所在】
 期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払をして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策をとることも可能であるが、保証人は、主債務者が支払いを遅滞したことを当然には知らない。
【主な改正の内容】
・個人保証一般における期限の利益喪失に関して、債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を新設(新458条の3)。情報提供義務違反の場合、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金について、保証債務の履行を請求することができない。
・債権者は、保証人(主債務者から委託を受けた保証人に限られる)から請求があったときは、主債務に関する情報を提供しなればならないとの規定を新設(新458条の2)することとなった。

以 上

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