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竹村総合法律事務所

代表弁護士のブログ

2020年4月3日 金曜日

ロンドンロックダウンレポートvol.2(ロンドン-東京、テレワーク中 / 福島さや香弁護士)

ロンドンレポート vol.2 (2020/04/2)

英国全土における外出制限令発令から10日が経ちました。
その間も英国における新型コロナウィルスは感染拡大の一途を辿り、日々暗い出来事ばかり耳にしますが、感染拡大防止措置のひとつであるソーシャルディスタンスの効果が出始めたというニュースが流れ始めています。

ソーシャルディスタンスとは、外出時に人と人との間を2メートル以上あけるようにする措置のこと(居住を共にしている家族を除く)をいいます。現在、多くの英国民が一日の大半を自宅内で過ごしていますが、必需品の買い物など人が集まる場所を完全に避けることはできないため、外出時に人と物理的な距離をとることで感染を防ぎ、ロックダウンの効果を最大化しようとするものです。
現在も営業が続いているスーパーマーケットや薬局では、一度に入店できる人数が極めて少なく制限され(小さなお店では、一度に入店できるのは1人までとされています。)、店内でも他の客とは2メートル以上の距離をとるよう注意喚起されています。入店できなかった人は店の外で列を作って順番を待つのですが、その際も、互いに2メートル以上の距離をとって並び、入店を待ちます。レジで会計をする際も同様です。
公園では比較的多くの人が運動をしていますが、そこでも皆、できる限りソーシャルディスタンスをとっています。

地下鉄やバスなどの公共交通機関は現在も動いていますが、それらはどうしてもテレワークできない仕事に出かける人のためのものとされており、それ以外の人が移動手段として公共交通機関を使うことはありません。平常時は多くの人が利用し混みあっているロンドンの公共交通機関ですが、今は、バス1台につき乗客は2-3名程度で、それぞれが距離をとって座っています。

そのほかにも外出制限を徹底するため、警察官が頻繁にパトロールしており、外出している人を呼び止めては外出目的を尋ねたり、早めに自宅に戻るよう呼び掛けたりしています。

このような取り組みが奏功し、英国において一人の感染者からの感染率が初めて1を下回ったとのことです。

ロンドンレポート vol.1 (2020/4/2)
竹村総合法律事務所 パートナー弁護士 福島さや香(ロンドンにてテレワーク中)

【スーパーの入店待ちの列】
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【公園で運動している様子】
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【ソーシャルディスタンス標示】
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【ソーシャルディスタンスを呼びかける張り紙(これは公園入口付近のもの)】
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2020年3月27日 金曜日

ロンドンロックダウンレポート(ロンドン-東京、テレワーク中 / 福島さや香弁護士)

ロンドンレポート vol.1 (2020/27/03)

イギリスでは、23日夜、英国全土における外出制限命令(いわゆるロックダウン)が発令され、今後3週間にわたり(延長の可能性あり)、ごく限定的な例外を除く外出が禁止されました。
日本でも、大阪や東京などで、週末の外出自粛要請が出されたとの報道を目にしました。
これまでにイギリスで起こった出来事が、日本でも今後の参考になることがあるかもしれないので、私の知り得る限りですが、イギリスの現状をお伝えしたいと思います。

まず、現在のイギリスでは、以下の4つの例外を除き、外出は認められていません。
(1)できるだけ頻度を少なくした形での、基本的な必需品の購入
(2)一人、もしくは同一世帯の人との一日一回の運動
(3)医療的必要のある場合
(4)真に必要があって、自宅で実施できない場合に限っての通勤
このルールに反する行動をとった場合は、警察が罰金や集会の解散などの対応をとることができるとされています。

ロックダウン1週間前の16日夕方、ジョンソン首相が全国民に対して外出自粛要請(特に在宅勤務への切り替え要請)を行い、その翌日から、多くの会社が在宅勤務への切り替えを行いました。
この方針転換までは、できる限り日常を保ちながら、長期的に新型ウィルスと戦っていくというのが英国政府の基本方針だったため、比較的平穏を保っていたイギリスでしたが、この日を境にがらっと潮目が変わりました。(弊害の方が大きいとの政府判断で休校にしていなかった学校も、20日から一斉休校となりました。)
16日以前から、消毒液、市販薬(特に、鎮痛剤や風邪薬)、紙製品、洗剤、保存食などは品薄状態でしたが(マスクはもともとの流通量が極めて少なく、ごく初期の段階で入手困難になっていました。)、17日朝から各地でパニック買いが始まり、スーパーの棚からほとんどの商品が姿を消しました。欲しいものが手に入らないどころか、スーパーに行っても買うものが何もない状況がしばらく続きましたが、23日のロックダウン以降、少しずつ商品が戻りつつあります。消毒液、マスク、市販薬は今でもなかなか手に入れられませんが、それ以外のものは何かしら買えるようになりました。皮肉なことですが、ロックダウンによって外出の機会が減り、各人がパニック買いを行う回数が減ったからではないかと思います。

現在、必需品を売っているお店以外は全て閉鎖されていますが、スーパーや薬局は営業を継続しており、また、必需品の買い物のための外出は許されており、また、お店に商品が戻りつつあるため、ロックダウン下でも、食料品や日用品には事欠くことのない生活を送っています。オンラインスーパーはほぼ機能していませんが、Amazonで購入したものはまだ届く状況です。

ロンドンレポート vol.1 (2020/27/03)
竹村総合法律事務所 パートナー弁護士 福島さや香(ロンドンにてテレワーク中)

【ロックダウン時のロンドン市内の様子】
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【ロックダウン直前の商品棚(買占めで空っぽ)】
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【ロックダウン後、数日すると商品が戻り始める(商品が少しずつ戻った商品棚)】
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2020年3月18日 水曜日

民法(債権関係)改正(6)意思能力、意思表示、行為能力

(※新型コロナウィルス感染症に関する法律相談は、電話・メールにてお問合せください)
***********************
民法上の法律行為をした場合の主観的(内心や思惑・意図)要素・当事者性についての改正になります。
離婚や夫婦関係でも、法律行為は各種場面で問題となりますので、改正点の確認が必要となります。

①意思能力制度の明文化
【問題の所在】
意思能力を有しない者がした法律行為について無効となることは、判例及び学説上認められているが、民法に明文の規定はない。
【主な改正内容】
・意思能力を有しない者がした法律行為は無効であることを明文化(新3条の2)
・意思能力を有しなかった者が相手方に対する原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」にとどまる旨の規定を新設(新121条の2第3項)

②錯誤に関する見直し
【問題の所在】
・現行法は「法律行為の要素」に錯誤があることを要件としているが、現行法の文言からはその内容が明確ではない。
・現行法上、錯誤の効果は無効であるが、通常の無効とは異なる解釈をする必要がある(錯誤を理由とする意思表示の無効は、錯誤に陥っていた表意者のみが主張できる)。
・詐欺があった場合に、意思表示の効力を否定することができるのは5年間であるが、無効の場合には期間制限がないため、錯誤と詐欺とのバランスを欠く。
【主な改正の内容】
・錯誤により意思表示の効果が否定される要件を明確化(新95条)
 ①意思表示が錯誤に基づくものであること
 ②錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること
 ③動機の錯誤の場合には、動機となる事情が法律行為の基礎とされていることについて表示されていること
・錯誤の効果を無効から取消しに変更(新95条1項)

③代理人の行為能力
【問題の所在】
・現行法上、制限行為能力者の代理行為は行為能力の制限の規定によって取り消すことができない(現102条)が、制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人である場合においては、代理行為の取消しができないと「他の制限行為能力者」の保護が図れないおそれがある。
【主な改正の内容】
・制限行為能力者が「他の制限行為能力者」の法定代理人としてした行為については、例外的に、行為能力の制限の規定によって取り消すことができる(新102条ただし書)。

以上

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2020年2月24日 月曜日

民法(債権関係)改正(5)約款

約款とは
大量の同種取引を迅速かつ効率的に行うために作成された定型的な内容の取引条項
をいいます。インターネット取引や、インフラ、多数の会員サービス等で多く用いられています。
【問題の所在】
・民法の原則によれば、契約の当事者は、契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないが、約款を用いた取引をする多くの顧客は約款に記載された個別の条項を認識していないのが通常である。
・民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要だが、約款を用いた取引では個別の承諾を得られないこともある。
【主な改正の内容】
 定型約款に関する規定を以下のとおり新設
①「定型約款」の定義(新548条の2第1項)
ⅰ 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、
ⅱ 契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体
(具体例:鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など)
②定型約款が契約内容となる要件
・次の場合には、定型約款の個別の条項についても合意したとみなすことを明確化(新548条の2第1項)
ⅰ 定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき
  又は
ⅱ 定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき
・相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意しなかったものとみなすことを明確化(新548条の2第2項)
③定型約款の変更要件
 次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化(新548条の4第1項)
ⅰ 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
  又は
ⅱ 定型約款の変更が、契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
※定型約款に関しては、反対の意思表示した場合を除き、施行日前の既存の契約についても改正民法が適用されるため、上記要件により契約内容が変更される

以上

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2020年2月19日 水曜日

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡

民法(債権関係)改正(4)債権譲渡について
【問題の所在】
債権譲渡による資金調達(特に中小企業における資金調達方法)の活用が期待されているが、
将来発生する債権の譲渡が可能であることが条文上明確でないことや、
譲渡制限特約が付された債権の譲渡は原則として無効であることが円滑な資金調達を行う際の障害になってしまっている。
離婚においては、当面の生活費の工面や、家族経営の場合の資金繰り、相続税の支払いなどに検討を要すべき事例がある。
そこで、
【主な改正の内容】
①将来債権(文字通り、将来発生する予定の債権のこと。)について
将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設(新466条の6)
②債権譲渡禁止特約について
・譲渡制限特約が付されていても、原則として債権譲渡の効力は妨げられない(新466条2項)=債権譲渡は有効であり、譲受人が債権者となる。
例外として、預貯金債権についての債権譲渡の場合、悪意又は重過失の譲受人その他の第三者との関係では、債権譲渡は無効となる(新466条の5)。
※譲渡人が破産したときは、譲受人は、債務者に債権の全額に相当する金銭を供託するように請求することができる(新466条の3)。

以上

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2020年2月3日 月曜日

民法(債権関係)改正(3)保証人・保証契約

※離婚においても、配偶者が保証人になっている場合や事業で保証している場合が多々あり、民法改正は重要な影響をもたらす。

①包括根保証の禁止の対象拡大→想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある

【問題の所在】
 平成16年民法改正により、貸金等債務に関する包括根保証の禁止が規定されたが、貸金等債務以外の根保証についても、想定外の保証債務の履行を求められる事例があり、包括根保証禁止の対象を拡大する必要がある。
【主な改正の内容】
・極度額の定めの義務付けについては、すべての個人根保証契約に適用(新465条の2)
・保証期間の制限については、現状維持(貸金等債務に限定)(新465条の3)
・特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の元本の確定については、すべての個人根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産等があっても貸金等債務以外の根保証では元本確定事由とならない点は、現状維持(新465条の4)。

②事業用融資における第三者保証の制限
【問題の所在】
 個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められる事例があり、第三者個人保証を抑制する必要がある。
【主な改正の内容】
 事業用融資の第三者個人保証に関して、保証契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人が保証意思を表示していなければ効力を生じないとの規定を新設(新465条の6~新465条の9)。

③保証契約締結時の情報提供義務
【問題の所在】
 保証人が主債務者の財産状況等を十分に把握せずに保証契約を締結している事例がある。
【主な改正の内容】
 事業上の債務の個人保証に関して主債務者による保証人への情報提供義務の規定を新設(新465条の10)。情報提供義務違反の場合、保証人が主債務者の財産状況等について誤認し、
主債務者が情報を提供しなかったこと等を債権者が知り、又は知ることができたという要件を満たせば、保証人は保証契約を取り消すことができる。

④主債務者の履行に関する情報提供義務
【問題の所在】
 期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払をして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策をとることも可能であるが、保証人は、主債務者が支払いを遅滞したことを当然には知らない。
【主な改正の内容】
・個人保証一般における期限の利益喪失に関して、債権者の保証人に対する情報提供義務の規定を新設(新458条の3)。情報提供義務違反の場合、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失した時からその後に通知を現にするまでに生じた遅延損害金について、保証債務の履行を請求することができない。
・債権者は、保証人(主債務者から委託を受けた保証人に限られる)から請求があったときは、主債務に関する情報を提供しなればならないとの規定を新設(新458条の2)することとなった。

以 上

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2020年1月25日 土曜日

民法(離婚との関係)改正(2)法定利率

民法(債権関係)改正(2)法定利率について

法定利率は、不法行為に基づく損害賠償請求に適用があるため、離婚においても、密接に関連する。より具体的には、慰謝料(心理的損害に対する賠償)の請求手続きや見込み、手続きの長期化が予想される場合に考慮すべき要素となる。

【現行法上の問題点】
・低金利の情勢により、法定利率(年5%)が市中金利を大きく上回る状態が継続
・法定利率を固定すると、将来、市中金利と大きく乖離する事態が再び生ずるおそれ
・市中金利の短期的・微細な変動に連動して頻繁に法定利率が変わると、対応するための社会的コストが大きい
・商行為によって生じた債務を特別扱いする合理的理由に乏しい

【主な改正の内容】
・法定利率を年3%(施行時)に引下げ(新404条2項)
・緩やかな変動性の導入(新404条3項~5項)
変動性の内容は…
・3年ごとに利率を見直す
・見直しにあたっては、貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に直近変動期の指標と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%単位の数値で法定利率が変動
・年6%の商事法定利率(商法514条)の廃止
・中間利息控除(※)にも法定利率(変動性)が適用されることを明文化(新417条の2第1項、722条1項)
  損害賠償請求権が生じた時点(例えば、事故の時点)の法定利率が適用される

(※)中間利息控除とは…
 被害者は、不法行為等による損害賠償によって、将来の逸失利益を含めて請求が可能となるが、被害者が一時金として取得すれば、これを元本として運用した利息分を被害者が利得することになる。
 そこで、不法行為等による損害賠償において被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益をあらかじめ控除する(中間利息の控除)。
 従来、中間利息の控除をする場合の利息の算定は、現404条の法定利率(年5%)によるとされていた(最判平成17年6月14日)。

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2020年1月5日 日曜日

民法(債権関係)改正(1)消滅時効

明けましておめでとうございます。
民法改正がいよいよ施行間近となりましたので概要の解説をしたいと思います。なお、民法は離婚手続きにおいても適用が多い法律の一つです。

【民法(債権関係)の一部改正を行った「民法の一部を改正する法律」が、一部の規定を除き、2020年4月1日から施行】
①時効期間と起算点に関する見直し
②人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の時効期間の特則の新設
 不法行為債権に関する長期20年の期間制限の解釈の見直し
③時効の中断・停止事由の見直し

①時効期間と起算点に関する見直し
【現行法上の問題点】
・職業別の短期消滅時効(現170条~174条)は、複雑でわかりにくい
・時効期間の大幅な長期化を避ける必要性があるが、単純な短期間化では、権利を行使できることを全く知らないまま時効期間が経過してしまうおそれ

【主な改正の内容】
・職業別の短期消滅時効はすべて廃止
・商事時効(商法522条)の廃止
・権利を行使することができる時から10年という時効期間は維持しつつ、権利を行使することができることを知った時から5年という時効期間を追加(新166条1項)

⇒改正により、従来の、権利を行使することができる時から10年と、権利を行使することができることを知った時から5年の、いずれか早い期間の経過によって消滅時効が完成することとなる。

②人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特則の新設
 不法行為債権に関する長期20年の期間制限の解釈の見直し
【現行法上の問題点】
・生命・身体は重要な法益であり、これに関する損害賠償請求権は保護の必要性が高い
・治療が長期間にわたるなどの事情により、被害者にとって迅速な権利行使が困難な場合がある
・不法行為による損害賠償請求権の長期20年の期間制限を除斥期間と解すると、被害者側に不都合となるおそれ
【主な改正の内容】
・人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間について長期化する特則を新設(新167条、724条の2)
 具体的には…
・「知った時から5年」
 →不法行為につき原則である3年から5年に長期化
・「権利を行使することができる時から20年」
 →債務不履行につき原則である10年から20年に長期化
・不法行為債権全般について、長期20年の時効期間制限が時効期間であることを明示(新724条)

⇒改正により、生命又は身体の侵害による損害賠償請求権について、債務不履行による場合と不法行為による場合とで消滅時効期間に差異がなくなった。

③時効の中断・停止の見直し

【現行法上の問題点】
・中断の制度が複雑でわかりにくい
・裁判上の催告に関する判例法理(訴えが取り下げられた場合でも、それまでの間は催告が継続していたと認め、取下げから6か月の間は時効の完成が猶予されているものとする)を明文化すべき
・当事者が裁判所を介さずに紛争の解決に向けて協議をしている場合にも、時効完成の間際になれば、時効の完成を阻止するために訴訟を提起しなければならない
・天災等による時効停止の期間が2週間では短すぎる(現161条)

【主な改正の内容】
・中断事由については、完成猶予事由(時効の完成を猶予する)と、更新事由(新たな時効の進行)とに振り分ける
 具体的には…
 ・承認→更新事由(新152条)
 ・裁判上の請求など→完成猶予事由+更新事由(新147条等)
  ・催告など→完成猶予事由(新150条等)
・停止事由については、完成猶予事由とする(新158条~161条)
・当事者間で、権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によってされた場合には、時効の完成が猶予されることとする(新151条)
・天災等による時効の完成猶予期間を3か月へ伸長する(新161条)

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2019年10月25日 金曜日

財産分与と生活費

結婚してから、離婚-厳密には別居時点まで-夫婦で築いた財産は共有であるものとして、離婚時に分与の対象となります。

個別的にはどこまで分与されるかは、生活態様と資産形成への起因や度合いによっても異なる。

また、財産分与と生活費は法的に別次元の問題だが、

別居時の生活費、つまり婚姻費用は、実質的には夫婦財産から出ると考えられるため、

財産分与の見通しを立てる際に、事実上、考慮・検討することになる。

別居・離婚時の主な経済的検討事項は、財産分与・生活費(婚姻費用)・養育費であり、

場合により、年金分割と慰謝料が請求される。

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2019年10月24日 木曜日

外国で離婚が成立した場合

他国での離婚が成立した場合、多くの場合、離婚合意をもって、あるいは離婚証明書の交付により、離婚が成立し証明される。

日本でも有効になるのが原則だが、国家間の条約により、扱いが異なるので、

相手配偶者の国の大使館に照会することが必要となる。

国によっては、当該国の弁護士が必要となり、弁護士費用がとても高い場合があるので、注意が必要である。

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